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歯石除去の痛みはなぜ起こる?原因と対策

歯石除去は、健康なお口を維持するために欠かせない処置です。しかし、「歯石を取ると痛い」という理由で、定期的なクリーニングをためらっている方も少なくありません。
実は、健康的な口腔内であれば、歯石除去は痛みをほとんど伴わない処置なのです。では、なぜ痛みを感じてしまうのでしょうか?
歯石除去中に痛みを感じる主な原因は、歯周病による歯茎の炎症、知覚過敏、むし歯の進行の3つに集約されます。それぞれの原因と対策について詳しく見ていきましょう。
炎症した歯茎に触れることによる痛み
歯石除去を行う際、スケーラーという器具が炎症を起こしている歯茎に触れると、痛みを感じることがあります。歯茎の炎症が強いほど、痛みも強くなる傾向にあります。
歯石は細菌の塊で、歯茎に溜まると炎症を引き起こします。この炎症した歯茎からの出血は、菌を含んでいるため、外に出したほうが良いとされています。
歯茎の炎症を軽減するには、日常的な丁寧なブラッシングが欠かせません。歯と歯茎の境目を意識して磨くことで、歯茎の状態が改善し、歯石除去時の痛みも軽減できます。
知覚過敏による痛み
知覚過敏とは、むし歯や歯の神経に炎症がないにも関わらず、一時的に痛みを感じる症状です。特に冷たい水などの刺激で痛みを感じやすくなります。
歯石除去の際に使用する機器から出る水が、知覚過敏のある部分に当たることで、しみるような痛みを感じることがあります。
歯茎が下がって象牙質が露出している場合、特に知覚過敏を起こしやすくなります。象牙質は温度変化などの刺激を神経に伝えるため、痛みを感じやすいのです。
知覚過敏対策としては、知覚過敏用の歯磨き粉を日常的に使用することが効果的です。また、歯科医院では知覚過敏用の薬剤を塗布してから処置を行うこともできます。
むし歯の進行による痛み
むし歯が進行すると、歯の最も硬いエナメル質に穴が開きます。この穴から水が侵入し、神経に刺激を与えることで痛みが生じます。
むし歯の進行度合いによっては、クリーニング時だけでなく、日常生活でも痛みを感じることがあります。この場合は、まずむし歯の治療を行うことで、痛みの改善が期待できます。
むし歯予防のためには、正しいブラッシング方法の習得と、定期的な歯科検診が重要です。早期発見・早期治療により、大きな痛みを伴う処置を避けることができます。
歯石除去の痛みを軽減する効果的な対策
「歯石除去は大切だけど、痛いのは嫌だ」
多くの方がこのように感じているのではないでしょうか。歯石除去の痛みを軽減するための効果的な対策をご紹介します。これらを実践することで、より快適な歯科治療を受けることができるようになります。
表面麻酔や局所麻酔の使用
歯石除去の痛みに耐えられない場合は、表面麻酔や注射による局所麻酔で痛みを軽減することができます。特に歯周病が進行している方や、知覚過敏が強い方には有効な方法です。
表面麻酔は歯茎に塗るタイプの麻酔で、痛みを感じにくくします。より確実に痛みを抑えたい場合は、注射による局所麻酔も選択肢となります。
注射の麻酔であれば効き目も強いため、治療後もしばらく痛みを感じない状態が続きます。ただし、麻酔が効いている間は、食事中に熱いもので火傷したり、舌や唇を噛んだりしないよう注意が必要です。
痛みに弱い方は、事前に歯科医師や歯科衛生士に相談してみましょう。多くの歯科医院では、患者さんの状態に合わせて麻酔の使用を検討してくれます。
分割治療による負担軽減
歯石の蓄積が多い場合、一度に全ての歯石を除去すると負担が大きくなります。このような場合は、数回に分けて治療を行うことで、一回あたりの痛みや不快感を軽減することができます。
例えば、上顎と下顎で分けたり、左右で分けたりするなど、患者さんの状態に合わせた分割治療が可能です。
歯周病が進行している方や、長期間歯科医院に通っていない方は、特に分割治療が推奨されます。一度に無理な治療を行うよりも、段階的に進めることで、歯茎の状態も徐々に改善していきます。
リラクゼーション法の活用
歯科治療への不安や緊張は、痛みをより強く感じる原因になります。リラクゼーション法を活用することで、心身の緊張を和らげ、痛みの感じ方を軽減できることがあります。
深呼吸や瞑想などのリラックス法を治療前や治療中に取り入れてみましょう。また、好きな音楽を聴きながら治療を受けられる歯科医院も増えています。
自分なりのリラックス方法を見つけることで、歯科治療への恐怖心が軽減され、結果として痛みの感じ方も変わってくるでしょう。
歯石除去後の痛みと対処法
歯石除去の処置が終わった後も、一時的に痛みや不快感が続くことがあります。これは正常な反応であり、多くの場合は数日で自然に改善します。
しかし、痛みが長引いたり強かったりする場合は、適切な対処が必要です。歯石除去後の痛みの原因と効果的な対処法について解説します。
歯石除去後に痛みが出る理由
歯石除去後に痛みを感じる主な理由は、歯石が取れたことで歯の表面が露出し、一時的に敏感になるためです。特に長期間歯石が付着していた場合、その部分は外部刺激から守られていた状態でした。
歯石を取り除くことで、それまで歯石に覆われていた部分が突然露出し、温度変化や甘いものなどの刺激に敏感に反応するようになります。これが、歯石除去後の痛みや知覚過敏の主な原因です。
また、歯石除去の際に歯茎を刺激したことで、一時的な炎症や腫れが生じることもあります。これも痛みの原因となりますが、通常は数日で落ち着いてきます。
痛みを和らげる効果的な方法
歯石除去後の痛みを和らげるには、以下の方法が効果的です。
まず、知覚過敏用の歯磨き粉を使用することで、露出した歯の表面を保護し、痛みを軽減することができます。知覚過敏用の歯磨き粉には、歯の表面の微細な穴を埋める成分が含まれており、刺激が神経に伝わりにくくなります。
また、刺激の強い食べ物や飲み物を一時的に避けることも大切です。特に、冷たいもの、熱いもの、酸っぱいもの、甘いものなどは刺激が強いため、歯の状態が落ち着くまでは控えめにしましょう。
歯ブラシは柔らかめのものを選び、優しく丁寧に磨くことも重要です。強い力で磨くと、敏感になっている歯や歯茎に余計な刺激を与えてしまいます。
痛みが長引く場合の対応
通常、歯石除去後の痛みや不快感は2〜3日程度で落ち着いてきます。しかし、1週間以上痛みが続く場合や、痛みが強くなる場合は、歯科医院に相談することをおすすめします。
長引く痛みには、以下のような原因が考えられます。
まず、知覚過敏が重度の場合は、歯科医院での専門的な処置が必要かもしれません。歯科医師が専用の薬剤を塗布することで、症状の改善が期待できます。
また、痛みの原因が歯石除去ではなく、むし歯や歯周病の進行である可能性もあります。この場合は、適切な治療を受けることが重要です。
さらに、歯ぎしりや食いしばりがある方は、歯に過度な力がかかり、痛みが長引くことがあります。このような場合は、マウスピースの使用を検討することも一つの選択肢です。
歯石除去の適切な頻度とは?

歯石除去は、どれくらいの頻度で受けるのが理想的なのでしょうか?
実は、この答えは一人ひとり異なります。お口の状態や生活習慣によって、最適な頻度は変わってくるのです。一般的な目安と、個人の状態に応じた頻度について詳しく見ていきましょう。
一般的な歯石除去の推奨頻度
歯科医療の現場では、一般的に3〜6ヶ月に1回の頻度で歯石除去を含む定期検診を受けることが推奨されています。特に3ヶ月という期間は、歯周ポケット内の歯周病菌がおよそ3ヶ月で元の数まで増えるという研究結果に基づいています。
健康な歯茎と適切な歯磨き習慣を持つ方であれば、半年に1回の頻度でも十分な場合があります。しかし、歯石がつきやすい体質の方や、歯並びが悪く磨きにくい部分がある方は、より頻繁な歯石除去が必要かもしれません。
定期的な歯石除去は、歯周病予防の基本です。歯石は歯ブラシでは除去できないため、プロフェッショナルケアが欠かせません。
個人の状態に応じた頻度調整
歯石除去の理想的な頻度は、以下のような個人の状態によって調整する必要があります。
歯周病と診断された方や、そのリスクが高い方は、1〜2ヶ月に1回の頻度でクリーニングを受けることをお勧めします。歯周病の進行を抑え、健康な歯茎を維持するためには、より頻繁なプロのケアが欠かせません。
また、むし歯ができやすい方も、頻繁なクリーニングが推奨されます。過去に何度もむし歯の治療を受けた経験がある場合や、甘いものを頻繁に摂取する習慣がある場合は、1〜2ヶ月に1回程度のクリーニングが適しているでしょう。
歯石がつきやすいと言われた方は、2〜3ヶ月に1回のクリーニングをお勧めします。歯石は歯垢(プラーク)が固まったもので、通常の歯磨きでは取り除けません。歯石の表面はザラザラしているため、さらに歯垢が付着しやすくなり、歯周病の原因となります。
特に注意が必要なケース
以下のような状況では、通常よりも頻繁に歯石除去を受けることが推奨されます。
歯並びが悪い方は特に注意が必要です。歯と歯の間に汚れがたまりやすく、歯ブラシが届きにくい部分が多いため、1〜3ヶ月に1回のクリーニングが推奨されます。特に歯間の隙間が狭い部分や奥歯は、汚れが蓄積しやすく、むし歯や歯周病のリスクが高まります。
タバコを吸う方も要注意です。喫煙者は、タバコの煙に含まれる有害物質が歯に付着し、歯石や歯垢がつきやすくなります。また、タバコのタールが歯に着色を引き起こし、歯周病や口臭の原因にもなります。そのため、1〜3ヶ月に1回のクリーニングが推奨されます。
コーヒーやお茶、赤ワインなど、着色しやすい飲み物をよく飲む方は、2〜3ヶ月に1回のクリーニングが適しています。これらの飲み物に含まれる色素は、時間とともに歯の表面に付着し、黄ばみや変色の原因となります。
歯石除去を定期的に受けるメリット
歯石除去は単なる美容処置ではなく、お口の健康を守るための重要な治療です。定期的に歯石除去を受けることで、どのようなメリットが得られるのでしょうか?
歯石除去を定期的に受けることの具体的なメリットについて解説します。これらのメリットを理解することで、定期的な歯科検診の重要性を再認識していただければと思います。
歯周病予防と口腔健康の維持
定期的な歯石除去の最大のメリットは、歯周病の予防です。歯石は細菌の温床となり、そのまま放置すると歯周病の原因になります。
歯周病は初期段階では自覚症状がほとんどないため、気づかないうちに進行してしまうことがあります。定期的な歯石除去により、歯周病の進行を防ぎ、健康な歯茎を維持することができます。
また、歯周病は全身の健康にも影響を及ぼす可能性があります。近年の研究では、歯周病と心臓病や糖尿病などの全身疾患との関連性が指摘されています。口腔内の健康を維持することは、全身の健康維持にもつながるのです。
むし歯リスクの低減と早期発見
歯石除去を含む定期的なクリーニングは、むし歯のリスクを低減するのにも役立ちます。歯石や歯垢が溜まった状態では、むし歯の原因となる細菌が増殖しやすくなります。
定期的なクリーニングにより、これらの細菌を減らし、むし歯のリスクを低減することができます。また、定期検診の際には、むし歯のチェックも行われるため、早期発見・早期治療が可能になります。
むし歯の初期段階では自覚症状がほとんどないことが多いですが、定期検診で発見されれば、痛みを伴う大きな治療を避けることができます。結果として、治療費の節約にもつながります。
審美性の向上と口臭予防
歯石除去には、審美的なメリットもあります。歯石は黄色や茶色の着色を伴うことが多く、見た目にも良くありません。定期的な歯石除去により、歯の自然な白さを取り戻すことができます。
また、コーヒーやお茶、タバコなどによる着色汚れも、プロフェッショナルクリーニングで除去することができます。清潔で美しい歯は、自信を持って笑顔になれる大きな要素です。
さらに、歯石や歯垢は口臭の主な原因となります。定期的なクリーニングにより、これらを除去することで、口臭を予防し、爽やかな息を維持することができます。
まとめ:快適な歯石除去のために
歯石除去は、お口の健康を維持するために欠かせない処置です。痛みを感じる場合は、歯周病による歯茎の炎症、知覚過敏、むし歯の進行などが原因として考えられます。
痛みを軽減するためには、表面麻酔や局所麻酔の使用、分割治療、リラクゼーション法の活用などが効果的です。また、日常的な丁寧なブラッシングや、知覚過敏用の歯磨き粉の使用も重要です。
歯石除去の適切な頻度は個人の状態によって異なりますが、一般的には3〜6ヶ月に1回が推奨されています。歯周病リスクが高い方や、歯石がつきやすい方は、より頻繁なクリーニングが必要かもしれません。
定期的な歯石除去には、歯周病予防、むし歯リスクの低減、審美性の向上、口臭予防など、多くのメリットがあります。痛みへの不安から歯石除去を避けるのではなく、適切な対策を講じて、定期的なケアを受けることが大切です。
船橋あらき歯科矯正歯科では、患者様一人ひとりの状態に合わせた痛みの少ない歯石除去を提供しています。痛みに配慮した丁寧な治療で、健康なお口を維持するお手伝いをいたします。定期的なクリーニングで、いつまでも健康な歯と笑顔を保ちましょう。
詳しい情報や予約については、船橋あらき歯科矯正歯科のウェブサイトをご覧いただくか、お電話でお問い合わせください。
監修医師
医療法人社団高志会 船橋あらき歯科・矯正歯科 院長 新木 志門

経歴
・日本歯科大学 生命歯学部 卒業
・東京医科歯科大学 第二総合診療科
・都内歯科医院 勤務
・医療法人輝翔会 西大津歯科医院 勤務
所属学会
・日本口腔インプラント学会 会員
・顎咬合学会 会員
・歯髄細胞バンク 認定医
