目次
マウスピース矯正とは?基本的な仕組みと特徴

マウスピース矯正は、透明な樹脂製のマウスピースを使って歯を少しずつ移動させる矯正方法です。従来のワイヤー矯正とは異なり、目立ちにくく取り外しも可能なため、近年人気が高まっています。
歯が動く仕組みは、マウスピースが歯に適切な圧力をかけることで、歯根膜を介して歯を移動させるというものです。歯は歯槽骨に直接固定されているわけではなく、歯根膜という組織によって保持されています。
継続的な圧力により、歯根膜の片側が縮み、反対側が伸びることで骨の吸収と添加が起こり、少しずつ歯が移動していくのです。この原理はワイヤー矯正と同じですが、装置の特性が大きく異なります。
マウスピース矯正では、治療計画に基づいて作られた複数のマウスピースを、約1〜2週間ごとに交換しながら使用します。各マウスピースには微妙な違いがあり、段階的に歯を理想の位置へと導いていきます。
マウスピース矯正の3つの大きなメリット
マウスピース矯正には、従来のワイヤー矯正と比較して明確なメリットがあります。特に審美性や快適さを重視する方にとって、魅力的な選択肢となるでしょう。
目立たない審美性の高さ
マウスピース矯正の最大の魅力は、透明で目立たないことです。人前に立つ機会が多い社会人や、見た目を気にする方にとって大きなメリットとなります。
会議中や接客時、さらには就職活動や結婚式といった重要なライフイベントでも、周囲に気づかれにくいため安心して装着できます。この審美性の高さは、矯正治療をためらっていた多くの方の背中を押す決め手となっています。
「矯正したいけど、目立つのが嫌で踏み出せなかった」という方にとって、マウスピース矯正は理想的な選択肢ではないでしょうか?
痛みや違和感が少ない快適さ
ワイヤー矯正では、金属製のブラケットやワイヤーが口腔内に触れることで、頬の内側に傷がついたり、強い違和感を覚えることがあります。一方、マウスピース矯正は薄い透明な素材でできているため、口腔内への刺激が少なく、比較的痛みを感じにくいのが特徴です。
私の臨床経験からも、マウスピース矯正を選ぶ患者さんの多くが「痛みへの不安」を理由に挙げています。もちろん個人差はありますが、総じてワイヤー矯正よりも痛みや違和感は軽減される傾向にあります。
取り外し可能な利便性
マウスピース矯正の大きな特徴として、自分で装置を取り外せることが挙げられます。食事や歯磨きの際には取り外すことができるため、食べ物の制限がなく、また口腔内の清掃も通常通り行えます。
これにより、矯正中でも好きなものを食べられる自由さと、虫歯や歯周病のリスクを低減できるという二重のメリットがあります。特に、歯科医師として患者さんの口腔内の健康を守る立場から見ると、この点は非常に重要です。
ただし、この利便性を活かすには、1日20時間以上の装着という自己管理が必要になります。この点については後ほど詳しく説明します。
知っておくべきマウスピース矯正の3つのデメリット

マウスピース矯正には多くのメリットがありますが、同時にいくつかの注意点やデメリットも存在します。治療を検討する際には、これらを十分に理解しておくことが大切です。
装着時間の厳守が必要
マウスピース矯正の最大の課題は、1日20時間以上の装着時間を守る必要があることです。食事や歯磨き以外の時間は常に装着し続けなければなりません。この装着時間を守れないと、計画通りに歯が動かず、治療期間が延びてしまう可能性があります。
自分で取り外せる便利さがある反面、自己管理の責任も伴うのです。特に忙しい日常の中で、装着し忘れたり、外したままにしてしまったりすることがないよう注意が必要です。
「自分は規則正しく続けられるだろうか?」と不安に感じる方は、まずはカウンセリングで相談してみることをおすすめします。
飲食時の取り外しが必要
マウスピース矯正中は、水や無糖の飲料以外を飲食する際には装置を外す必要があります。そのため、頻繁に飲食する習慣がある方や、外食が多い方は少し不便に感じるかもしれません。
また、装置を外した後は歯磨きをしてから再装着することが推奨されるため、外出先では歯磨きの手間が増えます。これが面倒に感じる方もいらっしゃいますが、口腔内の健康を守るためには重要なステップです。
適応症例に限りがある
マウスピース矯正は万能ではなく、適応できる症例に限りがあります。重度の不正咬合や複雑な歯の移動が必要なケースでは、従来のワイヤー矯正の方が適している場合があります。
例えば、大きな歯の回転や垂直方向の移動、顎の骨格的な問題がある場合などは、マウスピース矯正だけでは十分な効果が得られないことがあります。
そのため、治療前の精密な検査と診断が非常に重要です。歯科医師の知識と経験に基づいた適切な判断があってこそ、マウスピース矯正の効果を最大限に引き出すことができます。
マウスピース矯正とワイヤー矯正の比較
マウスピース矯正とワイヤー矯正、どちらが自分に合っているのか迷われる方も多いでしょう。ここでは両者の違いを明確にし、選択の参考になる情報をお伝えします。
見た目と審美性
見た目の違いは一目瞭然です。マウスピース矯正は透明で目立たないのに対し、ワイヤー矯正は金属製のブラケットとワイヤーが目立ちます。
近年では裏側矯正やセラミックブラケットなど、目立ちにくいワイヤー矯正も選択できますが、完全に透明なマウスピース矯正の審美性には及びません。特に人前に立つ機会が多い方や、見た目を重視する方にはマウスピース矯正がおすすめです。
ただし、審美性だけで選ぶのではなく、ご自身の症例に最適な方法を選ぶことが何よりも重要です。
治療効果と適応症例
治療効果という点では、ワイヤー矯正の方が幅広い症例に対応できます。特に複雑な歯の移動や、顎の骨格的な問題を伴うケースでは、ワイヤー矯正の方が確実な効果が期待できます。
一方、マウスピース矯正は軽度から中等度の不正咬合に適しています。前歯の叢生(でこぼこ)や、軽度の出っ歯、すきっ歯などが代表的な適応症例です。
日本臨床矯正歯科医会の見解によれば、「効果が装着時間に影響されること」「適応症例が限られること」などがマウスピース矯正の限界として挙げられています。適切な症例選択と患者さんの協力があってこそ、良好な結果が得られるのです。
痛みと快適性
痛みや不快感については、一般的にマウスピース矯正の方が少ないとされています。ワイヤー矯正では、ワイヤーの調整後に強い痛みを感じることがありますが、マウスピース矯正ではその痛みが比較的穏やかです。
また、ワイヤー矯正では金属が頬の内側に当たって傷ができることがありますが、マウスピース矯正ではそのようなトラブルはほとんどありません。
ただし、どちらの方法でも、歯が動く際の痛みや違和感は完全には避けられません。これは歯が移動する過程で生じる自然な反応です。痛みの感じ方には個人差もあるため、過去の矯正経験や痛みへの耐性も考慮して選択するとよいでしょう。
マウスピース矯正の治療の流れと期間

マウスピース矯正の治療は、どのような流れで進むのでしょうか。ここでは一般的な治療ステップと期間について解説します。
初診からマウスピース装着まで
まず初回のカウンセリングでは、現在の歯並びの状態を確認し、マウスピース矯正が適しているかどうかを診断します。虫歯や歯周病がある場合は、矯正前にそれらの治療を行います。
次に精密検査として、レントゲン撮影や口腔内の写真撮影、歯型の採取などを行います。最近では3Dスキャナーを使用して、より精密なデータを取得する医院も増えています。
これらのデータをもとに治療計画を立て、オーダーメイドのマウスピースを作製します。マウスピースが完成するまでには約1〜3ヶ月かかることが一般的です。
マウスピースが届いたら、使用方法や注意点について詳しい説明を受け、実際に装着を開始します。このとき、必要に応じてアタッチメント(マウスピースの効果を高めるための小さな突起)を歯に付けることもあります。
通院頻度と治療期間
マウスピース矯正の通院頻度は、一般的に1〜2ヶ月に1回程度です。これはワイヤー矯正(約4週間に1回)と比べると少なく、忙しい方にとっては大きなメリットとなります。
治療期間は症例の複雑さによって大きく異なりますが、軽度から中等度の症例では約1〜2年が目安です。ただし、装着時間を守らない場合は治療期間が延びる可能性があります。
治療の進行に伴い、定期的に口腔内の状態をチェックし、必要に応じて治療計画を微調整していきます。患者さんと歯科医師の二人三脚で、理想の歯並びを目指していくのです。
マウスピース矯正を成功させるためのポイント
マウスピース矯正の成功には、患者さん自身の協力が不可欠です。ここでは治療を最大限に効果的にするためのポイントをご紹介します。
装着時間の厳守
何度も強調していますが、1日20時間以上の装着は必須です。食事や歯磨き以外の時間は常に装着し、規則正しく使用することが重要です。
「少しくらい外していても大丈夫だろう」という甘い考えは禁物です。装着時間が不足すると、計画通りに歯が動かず、次のステップに進めなくなることがあります。
装着時間を管理するために、専用のアプリを活用したり、日記をつけたりする方法もあります。自分に合った方法で、確実に装着時間を確保しましょう。
適切な清掃管理
マウスピースの清潔を保つことも重要です。使用中に細菌が繁殖すると、口臭や虫歯、歯周病のリスクが高まります。
マウスピースを外した際は、ぬるま湯でやさしく洗い流し、専用の洗浄剤で定期的に洗浄することをおすすめします。また、歯磨きをしてから再装着することで、マウスピース内に食べかすや細菌が閉じ込められるのを防ぎます。
清潔なマウスピースで治療を続けることが、口腔内の健康を守りながら理想の歯並びを目指す秘訣です。
定期的な通院と歯科医師との連携
定期検診を欠かさず受けることも、治療成功の鍵です。予約された通院日には必ず来院し、治療の進行状況を確認してもらいましょう。
また、違和感や痛みを感じた場合は、我慢せずに早めに相談することが大切です。小さな問題も放置すると大きなトラブルにつながることがあります。
歯科医師との良好なコミュニケーションを保ち、二人三脚で治療を進めていくことが、最短かつ最良の結果につながります。
まとめ:自分に合った矯正方法を選ぶために
マウスピース矯正は、透明で目立たない、痛みや違和感が少ない、取り外し可能という大きなメリットがある一方で、装着時間の厳守が必要、飲食時に取り外しが必要、適応症例に限りがあるというデメリットも存在します。
どちらの矯正方法が最適かは、歯並びの状態や生活スタイル、価値観によって異なります。重要なのは、メリット・デメリットを十分に理解した上で、ご自身に最適な選択をすることです。
船橋あらき歯科矯正歯科では、患者様一人ひとりの状態やライフスタイルに合わせた矯正プランをご提案しています。マウスピース矯正についてもっと詳しく知りたい方は、ぜひ一度カウンセリングにお越しください。
あなたの素敵な笑顔のために、最適な矯正方法を一緒に見つけましょう。
詳しい情報や無料カウンセリングのご予約は、船橋あらき歯科矯正歯科までお気軽にお問い合わせください。JR船橋駅北口直結で通院も便利です。
監修医師
医療法人社団高志会 船橋あらき歯科・矯正歯科 院長 新木 志門

経歴
・日本歯科大学 生命歯学部 卒業
・東京医科歯科大学 第二総合診療科
・都内歯科医院 勤務
・医療法人輝翔会 西大津歯科医院 勤務
所属学会
・日本口腔インプラント学会 会員
・顎咬合学会 会員
・歯髄細胞バンク 認定医
