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子供の歯磨き習慣を身につけるコツ ― 年齢別の実践ポイントと工夫

お子さまの歯磨き習慣づくりに悩んでいませんか?
毎日の歯磨きを嫌がったり、なかなか自分から進んで磨こうとしなかったり・・・多くの保護者の方が同じような悩みを抱えています。
でも、安心してください。
子どもの歯磨き習慣は、年齢に応じた適切な声かけと楽しい工夫によって、無理なく身につけることができます。
この記事では、船橋の小児歯科医として多くのお子さまの歯の健康を見守ってきた経験をもとに、0歳から小学生まで年齢別の歯磨き指導法・仕上げ磨きのコツ・嫌がるときの対処法・虫歯予防のポイントを詳しくご紹介します。
なぜ子どもの歯磨き習慣が大切なのか
乳歯は永久歯と比べてエナメル質が薄く、虫歯になりやすい特徴があります。
「乳歯はどうせ生え変わるから」と考える方もいらっしゃいますが、実は乳歯の虫歯は将来の歯の健康に大きな影響を与えます。
乳歯の虫歯が進行すると、永久歯の形成異常や変色、歯並びの悪化、顎の成長への悪影響など、さまざまな問題を引き起こす可能性があるのです。

だからこそ、小さいうちから正しい歯磨き習慣を身につけることが、生涯にわたる歯の健康を守る第一歩となります。
正しい歯磨きによって口内を清潔に保つことで、乳歯の虫歯リスクを大幅に抑えることができるのです。
歯磨き習慣が腸の健康にも影響する
興味深いことに、最近の研究では歯磨き習慣が子どもの健康全般に影響を与えることが明らかになっています。
幼児期で習慣的な歯磨き回数が少ないと機能性便秘になる傾向があり、適切な歯磨き習慣がある群(1日2回以上)と比較すると、歯磨きを毎日は行わない子どもでは慢性的な機能性便秘になる確率が62%増加していたという調査結果もあります。
口腔細菌と腸内細菌叢の密接な関連や、歯磨きなどの口腔刺激が腸の運動を促進することが、その理由として考えられています。
出典
東北大学「ハミガキをする子はおなかの調子もいい~子どもの歯磨き習慣と機能性便秘との関連」
(2025年3月)より作成
年齢別・歯磨き習慣の身につけ方
子どもの成長段階に合わせた歯磨き指導が、習慣化の鍵となります。
ここでは、0歳から小学生まで、年齢別に具体的な実践ポイントをご紹介します。
0歳~1歳:歯磨きに「慣れる」準備期間
乳歯が生え始める8か月頃が、歯磨きスタートのタイミングです。
この時期は、まずはハブラシに慣れることが何より大事。
歯が生えていない時期でも、ぬるま湯で湿らせたガーゼを使い、抱っこしながら歯や歯茎をやさしく拭いてあげましょう。口の中に食べ物以外のものが入ることに慣れさせるための大切なステップです。
歯が生え始めたら、柔らかい歯ブラシで優しく磨きます。抱っこしたまま磨いたり、遊び感覚で始めると嫌がりにくくなります。
この時期の歯磨きは「スキンシップの時間」と捉えることがポイントです。

1歳~2歳:自分で磨くことを「知る」期間
歯が生え揃い始めたこの時期は、自分で歯を磨くことを知る重要な期間です。
子ども用の歯ブラシを持たせて、自分で歯を磨くことを教えていきましょう。ただし、安全リングなどが付いた子ども用の歯ブラシを用意して、喉の奥を突いてしまわないよう注意が必要です。
この年齢の子どもの歯磨きはきれいに磨けていないことが多いため、仕上げ用歯ブラシを使い、磨けていなかった箇所をきれいにすることが重要です。
細かな歯磨きの方法を指導するよりも、「歯磨きは自分でするもの」という習慣を身につけさせることを優先しましょう。
3歳~6歳:一人で磨く「練習」期間
この時期は、一人で歯磨きができるようにする練習期間です。
歯磨きの手順、当て方や動かし方などの正しいブラッシング方法をしっかりと教えていきます。保護者が自分の歯磨きをしている姿を見せたり、鏡を使いながら細かく伝えていきましょう。
ただし、一人で歯磨きを練習していたとしても食べカスや歯垢が口の中に残るため、磨き残しのある部分を指摘しながら仕上げ磨きを徹底してください。
特に5歳頃からは永久歯に生え変わる時期となるため、乳歯以上に虫歯にならないように注意して磨く必要があります。
7歳以上:正しい方法を「身につける」時期
永久歯が生え始める大切なタイミングです。
歯磨きの「質」を意識して、磨き残しのチェックを一緒に行いましょう。時には動画やイラストなどを使って歯磨きの大切さを説明するのも効果的です。
骨格や歯並びで歯ブラシの当て方にひと工夫が必要な場合もあります。鏡を見ながら磨いてもらうとかなり違ってきます。
歯列不正はあて方を工夫すればいい場合が多いですが、奥を磨くにはブラシのサイズも重要です。面倒でも一番奥だけサイズダウンした方がいい場合もあります。
10歳頃までは、保護者による仕上げ磨きを続けることをおすすめします。
仕上げ磨きの正しいやり方とコツ
仕上げ磨きは、子どもの歯を守るために欠かせない重要なケアです。
日本では90%のご家庭で仕上げ磨きが行われていますが、正しい方法を知ることで、その効果は大きく変わります。

仕上げ磨きの基本姿勢
口の中が見やすく、安全で歯磨きしやすい姿勢が大切です。
子どもが上手に立っていられないうちは、保護者のひざの上に寝かせることをおすすめします。ハミガキ剤を使い始めたら、唾液やハミガキ剤を飲みこみにくくするために、子どもを立たせて歯磨きしましょう。
保護者が子どもの後ろに回り頭をお腹や脇で固定して歯磨きしてあげる方法も効果的です。
磨き方の基本ルール
1か所につき20回以上、丁寧に動かしましょう。
歯垢(プラーク)はなかなか取りきれないため、ブラッシングの時間は3分以上が目安です。
強い力で動かすとハブラシの毛先が広がって歯ぐき(歯肉)を傷つけたり、歯垢(プラーク)が逆に取れにくくなったりします。さらに子どもが痛がり、歯磨きを嫌がる原因になってしまうこともあります。
ペングリップ(鉛筆持ち)をすると歯茎に無理な力がかかりにくいので、持ち方を変えてみるのもよいでしょう。
特に注意すべき場所
乳歯の時期は、ムシ歯になりやすい「奥歯のかみ合わせ上下左右4箇所」「上の前歯」を十分に気をつけましょう。
仕上げみがきをしてあげる方の利き手側の犬歯も、歯みがきがしにくいため、要注意の場所です。
奥歯はハブラシを奥から前に動かしましょう。特に、奥歯のかみ合わせは溝に歯垢(プラーク)が残りやすい場所です。
前歯を磨くときのコツ
上くちびると歯ぐき(歯肉)をつないでいる「スジ」の部分にハブラシが当たると子どもが痛がり、歯磨きを嫌がる原因になってしまいます。
上くちびるを持ち上げて、歯と歯ぐき(歯肉)の境目が見えるようにし、ハブラシを持っていない方の人差し指の腹で上くちびると歯ぐき(歯肉)をつないでいる「スジ」の部分を隠して、仕上げみがきをしてあげましょう。
仕上げ磨きのタイミング
食事のたびに、お子さんが歯みがきした後に仕上げみがきをしてあげるのがベストです。
毎食後が難しい場合は、夕食後やおやすみ前を日課にしましょう。寝ている間は唾液の量が減り細菌の量が増えてしまい、起床時には夕食後の約30倍になります。
出典
より作成
子どもが歯磨きを嫌がるときの対処法
歯磨きを嫌がるのには、幼児ならではの理由があります。
その理由を理解し、適切に対処することで、歯磨きへの抵抗感を減らすことができます。
嫌がる主な理由
口の中が痛い・違和感がある
口の中に異物が入っているので、歯磨きを始めたばかりの頃に違和感を感じるのは仕方のないことです。痛がっている場合は、仕上げ磨きの力が強い可能性があります。
怒られるのが嫌
「我慢しなさい!」「虫歯になっちゃうよ!」と怒ってしまうと、「歯磨き=怒られる」というイメージを持ってしまいます。また、歯磨き中に体を押さえつけられるのが嫌だと感じるお子さんもいます。
機嫌が悪い
寝る直前などの眠たい時間に歯磨きをすると嫌がることが多いです。寝たいのに無理やり歯を磨かれるのを嫌だ、と感じるお子さんもいます。
つまらない
歯磨きをつまらないと感じで嫌がっているお子さんもいます。楽しい工夫を取り入れることで、前向きに取り組めるようになります。

前向きに取り組んでもらう5つのコツ
- 子ども用の歯ブラシを使う
子どもは大人と違い口や歯が小さいため、歯の隅々までを磨ける毛先の小さな歯ブラシが必要です。毛先の丸い歯ブラシであれば歯茎への刺激を低減でき、シリコン製のものであれば質感が歯茎に似ていることで口の中に入れたときの違和感を減らせます。
- 美味しいと感じる歯磨き粉を使う
子ども向けのフルーツ味やキャラクターデザインの歯磨き粉を選ぶと、歯磨きの時間が楽しみになります。
- キャラクターの入った歯ブラシを使う
好きなキャラクターの歯ブラシやコップを選ばせることで、歯磨きへのモチベーションが上がります。
- ご褒美をあげる
歯磨きができたらシールを貼るなど、小さなご褒美を用意するのも効果的です。
- 機嫌が良い時間を選ぶ
寝る前の不機嫌になりやすい時間ではなく、ご飯を食べてすぐなどの、機嫌の良さそうな時間に歯を磨く習慣をつけましょう。
楽しく歯磨き習慣を身につける工夫
子どもが楽しめるアイデアを取り入れることで、歯磨きが「嫌なこと」から「楽しいこと」に変わります。
楽しい工夫の具体例
歯磨き専用のお歌や動画を活用する
歯磨きの時間に合わせた歌や動画を流すことで、楽しみながら磨けます。
「〇秒チャレンジ!」などゲーム感覚で行う
アプリを使って磨いた時間を記録するのも効果的です。歯磨き中に数を数えながら歯みがきすると、歯磨きの終わりがわかるので子どもも頑張れます。
お互いに磨き合う
保護者とお子さんがお互いに歯を磨き合うことで、スキンシップを取りながら楽しく習慣化できます。
歯磨き好きにするための5つのポイント
- 歯が生え始めたらすぐに歯磨きに慣れさせる
早い時期から子どもが自分で歯みがきする習慣をつけることが大切です。この時期は自分では上手にできませんが、口に入れているだけでも自分で歯みがきさせることが大事です。
- 歯磨きを楽しい時間にする
歯磨き中に話しかけたり、褒めたりすることで、ポジティブな体験にしてあげましょう。
- 怒るのではなく褒める
できたことを認めてあげると、モチベーションが上がります。仕上げみがきが終わったらほめてあげることも大切です。
- 磨く側も練習をする
力が強かったりして、ハブラシが歯ぐき(歯肉)に当たると嫌がるので、子どもに不快感を与えないようにすることも重要です。
- 日ごろから口元を触る
口元を触られることに慣れていると嫌がりにくくなります。

虫歯予防のための追加ケア
毎日の歯磨きに加えて、フッ素やデンタルフロスなどの追加ケアを取り入れることで、虫歯予防の効果がさらに高まります。
フッ素の活用
フッ素は歯を強化し、虫歯の進行を防ぎます。
フッ素入りの歯磨き粉やフッ素ジェルを使用することで、歯をより丈夫にしましょう。歯磨き後にフッ素ジェルやフッ素入りのうがい薬を使用して、歯の表面をフッ素でコーティングすることも効果的です。
デンタルフロスの使用
歯ブラシだけでは届かない歯と歯の間の汚れを取り除くために、デンタルフロスの使用をおすすめします。
特に奥歯の間は食べカスが残りやすいため、定期的なフロスケアが重要です。
歯科医院での定期検診
乳歯が生えてきたら、仕上げみがきはもちろん、歯科医院で定期的に健診を受けるようにしましょう。
乳歯は永久歯より小さい分、エナメル質が薄くなっており、ムシ歯になると、あっという間に神経まで届いてしまうので要注意です。
当院では、子どもが歯科医院を「怖くない場所」と思えるように、やさしく声かけしながら診療を進める「ステップ診療」、歯磨き教室やブラッシング指導の実施、フッ素塗布やシーラントなど予防処置の充実など、さまざまな取り組みを行っています。
初めての歯医者でも、安心して通っていただける環境を整えています。
まとめ ― 一生の宝となる歯磨き習慣を
子どもの歯磨き習慣は、最初は大変に感じるかもしれません。
しかし、年齢に応じた適切な声かけと楽しい工夫を取り入れることで、自然と習慣になります。
0歳から始める「慣れる」期間、1歳~2歳の「知る」期間、3歳~6歳の「練習」期間、7歳以上の「身につける」時期・・・それぞれの段階で適切なサポートを行うことが大切です。
仕上げ磨きは10歳頃まで続け、正しい方法で丁寧に磨いてあげましょう。嫌がるときは理由を理解し、楽しい工夫を取り入れることで、前向きに取り組めるようになります。
そして、毎日の歯磨きに加えて、フッ素やデンタルフロスなどの追加ケア、歯科医院での定期検診を組み合わせることで、お子さまの歯を虫歯から守ることができます。
「子供 歯磨き 習慣」づくりは、保護者の関わりがカギとなります。
楽しみながら続けていくことで、お子さまの一生の宝となる健康な歯を守りましょう。
船橋あらき歯科矯正歯科では、保護者の皆さまが不安なく子育てできるよう、専門的なサポートを行っています。気になることがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。お子さまの歯の健康を、一緒に守っていきましょう。
詳しい診療内容や予約方法については、船橋あらき歯科矯正歯科の公式サイトをご覧ください。
監修医師
医療法人社団高志会 船橋あらき歯科・矯正歯科 院長 新木 志門

経歴
・日本歯科大学 生命歯学部 卒業
・東京医科歯科大学 第二総合診療科
・都内歯科医院 勤務
・医療法人輝翔会 西大津歯科医院 勤務
所属学会
・日本口腔インプラント学会 会員
・顎咬合学会 会員
・歯髄細胞バンク 認定医

