目次
入れ歯の正しい洗浄方法と頻度 ― 長持ちさせるお手入れの基本

入れ歯を清潔に保つことが、なぜこれほど大切なのか
入れ歯を使い始めたばかりの方も、長年愛用されている方も、毎日のお手入れに不安を感じることはありませんか?
実は、入れ歯のケアを怠ると、口臭や口内炎だけでなく、誤嚥性肺炎のような深刻な健康リスクにつながる可能性があります。入れ歯には食べかすや「プラーク(歯垢)」が付着しやすく、放置すると雑菌が繁殖し、カビの一種である「カンジダ」による感染症を引き起こすこともあるのです。
特に要介護のご高齢者の入れ歯からは、呼吸器感染症の原因となる細菌が検出されることも報告されています。また、入れ歯は繊細な医療器具です。適切なメンテナンスを怠ると変形や破損を招き、噛む機能や発音に影響を及ぼすこともあります。
この記事では、船橋あらき歯科矯正歯科の視点から、入れ歯を清潔に保ち、長持ちさせるための正しい洗浄方法と頻度について、わかりやすく解説します。

入れ歯の種類によって異なるお手入れのポイント
入れ歯には「部分入れ歯」「総入れ歯」「ノンクラスプデンチャー」など、いくつかの種類があります。
それぞれ使用されている素材が異なるため、適切な洗浄方法を選ぶことが大切です。間違った方法でお手入れをすると、入れ歯の変色や劣化を招く恐れがあります。
部分入れ歯 ― 金属のバネを守る洗浄剤選び
金属のバネ(クラスプ)が使われた部分入れ歯には、金属にやさしい「中性」または「弱アルカリ性」の洗浄剤を選びましょう。酸性の洗浄剤は金具の変色や劣化を引き起こす可能性があるため、使用を避けてください。
部分入れ歯用と記載がある洗浄剤、または部分入れ歯・総入れ歯兼用品を選ぶと安心です。金具の汚れは歯ブラシで取り除くのが難しいため、洗浄剤でしっかりケアすることが、残存歯を守ることにもつながります。
ノンクラスプデンチャー ― 専用洗浄剤が推奨される理由
金属を使用していない「バルプラスト」や「スマイルデンチャー」といったノンクラスプデンチャーの場合は、専用の洗浄剤がおすすめです。
塩素系やアルカリ性の洗浄剤は変色や変質を引き起こすため使えません。市販の洗浄剤を使えるかどうかは、かかりつけの歯科医師に確認するのが最も安全です。高価なノンクラスプデンチャーが傷むと、作り直しに費用がかさむため、特に注意が必要です。
総入れ歯 ― 目的に合わせた洗浄成分の選び方
総入れ歯なら酸性・アルカリ性どちらの洗浄剤も使えるので、目的に合わせて選びましょう。汚れ落ちを重視する方には「アルカリ性」、除菌効果を求める方には「酸性」の洗浄剤が適しています。
ただし、総入れ歯でも金属が使われている場合は、金具を傷めないよう中性~弱アルカリ性の洗浄剤を選択してください。

絶対にやってはいけない入れ歯のNG行為
良かれと思って行ったケアが、実は入れ歯を傷めている可能性があります。
ここでは、入れ歯のお手入れでよくある間違いを5つご紹介します。これらを避けることで、入れ歯を長持ちさせることができます。
熱湯に入れる ― 変形のリスクが高まる行為
「洗浄剤がない」「洗浄セットを忘れた」といった場合に、入れ歯を熱湯で消毒しようと考える方も少なくありません。しかし、この方法は大変危険です。
入れ歯には高温に弱いプラスチックや樹脂が使われており、熱湯に入れると変形したり劣化したりして、使えなくなってしまう場合があります。実際に熱湯で消毒したことで、入れ歯が使えなくなったという声も多く聞かれます。
硬い歯ブラシやスポンジを使う ― 表面を傷つける原因
色素付着や歯の黄ばみ、歯石といった入れ歯の頑固な汚れは取り除くのが難しいことが多いです。しかし、入れ歯のお手入れにおいて無理をしてはいけません。
毛先の硬いブラシや研磨性の高いメラミンスポンジを使用すると、入れ歯の表面を傷つけるリスクがあり、最終的には破損へとつながります。汚れが頑固に残る場合は、焦らずに専用の洗剤を使用してみることをおすすめします。
歯磨き粉で磨く ― 研磨剤が入れ歯を削る
多くの方が陥りがちな誤解が、入れ歯のお手入れに普段の歯ブラシや歯磨き粉を使用することです。特に、研磨剤が含まれる歯磨き粉での手入れは絶対に避けなければなりません。
その理由は、歯磨き粉の研磨剤が入れ歯を削ってしまい、噛み合わせが悪くなったり、早く劣化したりするからです。このような状態が続くと、入れ歯のフィッティング作業が必要となり、大きな負担となります。
漂白剤に浸ける ― 変色や変形のリスク
漂白剤は強力な化学物質であり、入れ歯の表面や素材にダメージを与える可能性があります。具体的には、入れ歯の色が変色したり、表面が荒れたりすることが考えられます。
さらに、漂白剤に浸け続けることで、入れ歯の変形も引き起こしかねません。その結果として、入れ歯の変形はフィット感を損ない、不快な装着感や痛みにつながります。
入れ歯洗浄剤に長時間浸ける ― 適切な時間を守る
入れ歯洗浄剤は効果的ですが、長時間浸けすぎると入れ歯の素材を傷める可能性があります。製品の指定された時間を守り、浸漬後は必ず流水で丁寧にすすいでから口に戻しましょう。
洗浄成分が残っていると、粘膜への刺激につながるおそれがあるため注意が必要です。

入れ歯の正しい洗浄方法 ― 毎日のケアと就寝前のお手入れ
入れ歯を清潔に保ち、長持ちさせるためには、毎日の正しい洗浄が欠かせません。
ここでは、毎食後のお手入れと就寝前の洗浄方法について、具体的な流れをご紹介します。
毎食後のお手入れ ― 3つのステップ
ステップ1:洗面器などに水を張る
入れ歯を落として破損したり、排水口に流したりしないよう、必ず洗面器などに水を張りましょう。小さな入れ歯でも必ず外してから、手の平にのせて洗面器の上でみがきます。
ステップ2:入れ歯を外して流水下で清掃する
義歯用ブラシを使用しましょう。ゴシゴシと力を入れすぎないように注意してください。特に歯肉などに接する内面をみがきすぎると、すき間ができてしまいます。汚れが残りやすい部分(クラスプなど)は丁寧にみがきましょう。
ステップ3:こまめに水またはぬるま湯につけておく
入れ歯は乾燥すると変形する可能性があるため、使用しないときはこまめに水またはぬるま湯につけておくことが大切です。
就寝前のお手入れ ― 入れ歯洗浄剤を活用する
毎食後のお手入れに加えて、就寝前は入れ歯洗浄剤を使用してお手入れしましょう。
ステップ1:容器に水またはぬるま湯を張る
専用の容器に水またはぬるま湯を張ります。熱湯は入れ歯の変形の原因になるため厳禁です。
ステップ2:義歯用ブラシで磨く
ブラシを用いて流水下で清掃します。
ステップ3:入れ歯洗浄剤を溶かした水かぬるま湯に浸ける
洗浄剤を使用するとブラシだけでは落としきれない汚れやカンジダ菌などの真菌や細菌を除去できます。1日1回は入れ歯洗浄剤を使用して清掃しましょう。浸漬時間は使用方法に従ってください。
洗浄後は、義歯用ブラシで浮き上がった汚れと入れ歯洗浄剤を洗い流します。就寝時に入れ歯を装着するかどうかについては歯科医師の指示に従ってください。
入れ歯洗浄剤の成分と効果 ― 目的に合わせた選び方
入れ歯洗浄剤は、含まれる成分によって洗浄力や作用が異なります。
自分の入れ歯に合ったものを選ぶためにも、それぞれの成分の特徴と効果を理解しておくことが大切です。
発泡剤 ― 効率よく汚れを落とす主流成分
食べカスや汚れを効率よく落としたい方には、発泡剤がぴったりです。重炭酸塩などの過酸化物の力で発泡し、入れ歯の汚れを落とします。
発泡剤は入れ歯洗浄剤の主流成分で、入れ歯を傷めにくいのがメリットです。漂白剤に比べると効果は弱いものの、着色汚れにもアプローチ可能で、消臭作用にも期待できます。
また、すばやく汚れを落とすなら、ラウリル硫酸塩・α-オレフィンスルホン酸塩などの界面活性剤にも注目してください。汚れを包み込み、歯から剥がします。
漂白剤・除菌剤 ― 着色汚れと除菌に効果的
入れ歯の着色汚れが気になる方には、漂白剤や除菌剤が適しています。入れ歯を傷めないよう、過硫酸塩・過ホウ酸塩・過炭酸塩などの酸素系漂白剤がおすすめです。
漂白剤には除菌効果もあるので、除菌にこだわる方は除菌率99.9%を謳う商品をチェックしてみましょう。マイルドな洗浄力を求める方には、二酸化チタンなどの触媒を利用した中性の商品もよいでしょう。
酵素 ― たんぱく質汚れを分解する
食べかすやたんぱく質などの有機汚れを分解する働きがあります。入れ歯の表面に付着したバイオフィルムやプラークを取り除くことで、口臭や炎症の予防にもつながります。
抗菌薬・抗真菌薬 ― カンジダ菌への対策
細菌や真菌の増殖を抑える効果があります。義歯性口内炎の原因となるカンジダ菌などへの対策にも役立ちますが、成分によっては粘膜に刺激を与えることもあるため、敏感な方は注意が必要です。

入れ歯洗浄の頻度 ― 毎日のケアが基本
入れ歯洗浄剤の使用頻度について、基本的には毎日の使用が推奨されます。
特に就寝中は細菌が繁殖しやすくなるため、夜間に洗浄剤を使用するのが効果的です。忙しい日は最低でも2〜3日に一度の使用を心がけましょう。
ただし、洗浄剤だけでは汚れをすべて落としきることはできません。入れ歯専用ブラシでの物理的な清掃と併用することで、より高い洗浄効果が期待できます。
入れ歯の清掃は、清潔な口腔内環境を保つための基本的な習慣です。毎日無理なく続けられる方法でケアを行いましょう。
入れ歯のまわりのお手入れ方法 ― 残存歯と粘膜のケア
入れ歯だけでなく、入れ歯のまわりのお手入れも大切です。
金属の部分(クラスプ)をかける歯や入れ歯と接している歯の面は汚れがたまりやすく、むし歯や歯周病になる恐れがありますので、ていねいにみがきましょう。
クラスプがかかっている歯のみがき方の工夫
歯ブラシを横から入れて小さく動かしてみがきましょう。入れ歯の内面と接する歯肉などの粘膜も清掃するようにしましょう。
残存歯を守るためにも、入れ歯対応洗浄剤でしっかり清潔に保つことが重要です。
入れ歯の保管方法と定期的な調整の重要性
入れ歯は使用しないときの保管方法も大切です。
乾燥すると変形する可能性があるため、水またはぬるま湯につけておくことが基本です。プラスチックの入れ歯を保管する際は、直射日光を避け、涼しい場所に保管しましょう。
定期的な調整が入れ歯を長持ちさせる
お口の状態は年齢とともに変化します。入れ歯の具合が悪い場合、自分で調節せず、歯科医院に相談しましょう。
以下のようなことが気になる場合は、早めに歯科医院を受診するようにしましょう。
- 入れ歯があたって歯肉が痛い
- 入れ歯が外れにくい、あるいは外れやすい
- 入れ歯が安定しない
- 入れ歯がこわれた
入れ歯で快適に過ごすために、毎日のお手入れで入れ歯はもちろん残っている歯や粘膜を清潔に保ち、かかりつけの歯科医院で定期健診を受けましょう。
まとめ ― 正しいケアで入れ歯を長く快適に使い続ける
入れ歯を清潔に保ち、長持ちさせるためには、毎日の正しい洗浄が欠かせません。
入れ歯の種類に合わせた洗浄剤選び、絶対にやってはいけないNG行為を避けること、毎食後と就寝前のお手入れを習慣化することが大切です。入れ歯洗浄剤は、発泡剤・漂白剤・酵素・抗菌薬など、目的に合わせて選びましょう。
また、入れ歯だけでなく、残存歯や粘膜のケアも忘れずに行い、定期的に歯科医院で調整を受けることで、入れ歯を長く快適に使い続けることができます。
船橋あらき歯科矯正歯科では、入れ歯の製作から調整、メンテナンスまで、患者様一人ひとりに寄り添った丁寧な診療を行っています。入れ歯のお手入れ方法や不具合についてお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。
詳しくは船橋あらき歯科矯正歯科の公式サイトをご覧ください。
監修医師
医療法人社団高志会 船橋あらき歯科・矯正歯科 院長 新木 志門

経歴
・日本歯科大学 生命歯学部 卒業
・東京医科歯科大学 第二総合診療科
・都内歯科医院 勤務
・医療法人輝翔会 西大津歯科医院 勤務
所属学会
・日本口腔インプラント学会 会員
・顎咬合学会 会員
・歯髄細胞バンク 認定医

