歯科クリーニングの理想的な頻度と効果 ― 予防歯科の重要性

歯科クリーニングの頻度・種類と効果

まず、歯科クリーニングにはいくつかの種類があることをご存知でしょうか?

歯科医院で行われるクリーニングには、主に「歯石除去(スケーリング)」と「PMTC(Professional Mechanical Tooth Cleaning)」があります。歯石除去は保険適用内で行える基本的なクリーニングで、歯と歯茎の間に付着した歯石を取り除く処置です。一方、PMTCはより専門的なクリーニングで、特殊な機器や研磨剤を使用して、普段の歯磨きでは取り切れない歯垢やバイオフィルムを徹底的に除去します。

これらのクリーニングは、虫歯や歯周病の予防に非常に効果的です。特に歯周病は初期症状があまりなく、気づいた時には進行していることが多い病気です。

定期的なクリーニングによって、痛みの出にくい小さな虫歯や初期段階での歯周病を早期に発見し、対処することができるのです。

歯科クリーニングを定期的に受けることで得られる主な効果は以下の通りです:

歯石や歯垢の除去による歯周病予防
プラークコントロールによる虫歯予防
着色汚れの除去による審美性の向上
口臭予防
早期の問題発見と対処

特に歯周病予防の観点では、歯周ポケット(歯と歯茎の間にできる隙間)の深さを測定することで、歯周病の進行具合を判断します。歯周ポケットが深いほど、歯周病が進行している可能性が高いため、この検査を定期的に行うことで早期発見・早期治療が可能になります。

理想的なクリーニング頻度の目安

では、歯科クリーニングはどのくらいの頻度で受けるのが理想的なのでしょうか?

一般的には、3ヶ月に1回のペースでクリーニングを受けることをおすすめしています。これは歯垢が約2週間で歯石に変わることを考慮し、歯石が溜まる前にしっかり除去するための頻度です。医学的な研究に基づく見解としても、定期検診とメンテナンスの間隔は3ヶ月が推奨されています。

歯周ポケット内の歯周病菌は、およそ3ヶ月で元の数まで増えるという研究結果もあります。このため、3ヶ月に1回の定期検診が一般的な目安とされているのです。

しかし、この頻度はあくまで目安であり、実際には個人の口腔内状態によって調整が必要です。例えば、以下のような方は、より頻繁なクリーニングが必要かもしれません:

歯周病にかかっている、または過去に歯周病の治療を受けたことがある
糖尿病などの全身疾患がある
喫煙習慣がある
歯並びが悪く、セルフケアが難しい
唾液の分泌量が少ない

一方で、口腔内が健康で、自宅でのケアが十分に行えている方であれば、半年に1回程度の頻度でも問題ない場合もあります。

あなたに最適なクリーニングの頻度は、歯科医師や歯科衛生士による口腔内診査の結果に基づいて決定されるべきです。初回の診察では、レントゲン撮影や歯周ポケットの測定などを行い、あなたの口腔内状態を詳しく評価します。その結果に基づいて、個人に合ったメンテナンスプログラムを提案することが重要です。

口腔状態別の推奨クリーニング頻度

口腔内の状態は人それぞれ異なります。ここでは、口腔状態別の推奨クリーニング頻度について詳しく見ていきましょう。

健康な歯茎と歯を持つ方

虫歯がなく、歯周病の兆候もない健康な口腔内状態の方は、3〜6ヶ月に1回程度のクリーニングが推奨されます。

自宅でのケアが十分に行えており、過去の虫歯や歯周病の経験が少ない方は、半年に1回の頻度でも十分な場合があります。ただし、定期的な検診は必ず受けるようにしましょう。

歯周病リスクがある方

歯周病と診断された方や、そのリスクが高い方は、1〜3ヶ月に1回の頻度でクリーニングを受けることをお勧めします。

歯周病は全身の健康にも影響を及ぼす可能性がある重要な疾患です。歯周病の進行を抑え、健康な歯茎を維持するためには、定期的なプロのケアが欠かせません。

むし歯リスクが高い方

むし歯ができやすい方も、頻繁なクリーニングが推奨されます。

むし歯のリスクは個人差が大きく、同じような歯磨き習慣でも、むし歯ができやすい方とそうでない方がいます。もし過去に何度もむし歯の治療を受けた経験がある場合や、甘いものを頻繁に摂取する習慣がある場合は、1〜3ヶ月に1回程度のクリーニングが適しているでしょう。

クリーニングと同時に、むし歯のチェックも行えるため、早期発見・早期治療にもつながります。これにより、大きな治療を避け、歯の寿命を延ばすことができるのです。

特別な注意が必要な方

いくつかの特定の状況では、通常よりも頻繁にクリーニングを受けることが推奨されます。あなたはこれらに当てはまりますか?

歯石がつきやすいと言われた方は、2〜3ヶ月に1回のクリーニングをお勧めします。歯石は歯垢(プラーク)が固まったもので、通常の歯磨きでは取り除けません。歯石の表面はザラザラしているため、さらに歯垢が付着しやすくなり、歯周病の原因となります。

歯並びが悪い方も注意が必要です。歯と歯の間に汚れがたまりやすく、歯ブラシが届きにくい部分が多いため、1〜3ヶ月に1回のクリーニングが推奨されます。特に歯間の隙間が狭い部分や奥歯は、汚れが蓄積しやすく、むし歯や歯周病のリスクが高まります。

クリーニング頻度を増やすべき生活習慣

日常の生活習慣によっても、理想的なクリーニング頻度は変わってきます。

タバコを吸う方はどうでしょうか?

喫煙者は、タバコの煙に含まれる有害物質が歯に付着し、歯石や歯垢がつきやすくなります。また、タバコのタールが歯に着色を引き起こし、歯周病や口臭の原因にもなります。そのため、1〜3ヶ月に1回のクリーニングが推奨されます。

着色汚れが気になる方

コーヒーやお茶、赤ワインなど、着色しやすい飲み物をよく飲む方は、2〜3ヶ月に1回のクリーニングが適しています。

これらの飲み物に含まれる色素は、時間とともに歯の表面に付着し、黄ばみや変色の原因となります。定期的なクリーニングで、これらの着色汚れを除去し、白く清潔な歯を維持することができます。

ただし、この場合は審美目的のクリーニングとなるため、保険適用外となる場合があります。費用については、事前に歯科医院に確認することをおすすめします。

矯正装置を装着している方

矯正装置を装着している方は、装置の周りに汚れがたまりやすいため、1〜2ヶ月に1回程度の頻度でクリーニングを受けることをお勧めします。

矯正装置があると、通常の歯磨きでは届きにくい部分が増えるため、虫歯や歯周病のリスクが高まります。定期的なクリーニングで、装置の周りの汚れをしっかり除去することが大切です。

どう思いますか?ご自身の口腔内状態や生活習慣に合わせた、最適なクリーニング頻度を見つけることが大切です。

予防歯科の重要性とメリット

予防歯科とは、むし歯や歯周病などになってからの「治療」ではなく、なる前の「予防」を大切にする考え方です。

近年、歯と口腔の健康が及ぼす全身への影響について数多くの報告があり、口腔の健康を保持増進することが健康寿命の延伸につながることがわかってきました。改めて「予防歯科」の重要性が注目されています。

予防歯科の基本は、歯が生えはじめた時から歯の健康を考え、正しい口腔衛生習慣を身につけることです。歯を失うと生活の質(QOL)が下がります。そうならないためにも、正しい知識を身につけ、歯科医師や歯科衛生士と一緒に歯とお口の健康づくりを実践することが大切です。

予防歯科を実践するメリットは多岐にわたります

虫歯や歯周病のリスクを減らせる
治療の痛みや不快感を避けられる
治療費の節約になる
歯の寿命を延ばせる
全身の健康維持につながる
口臭予防になる
美しい歯を保てる

子どもの頃から予防歯科を実践することで、むし歯や歯周病のリスクを減らせるだけではなく、口腔機能の維持向上にもつながるのです。一生、健康な歯とお口でいるために、「予防歯科」をはじめましょう。

歯を失う悪循環を防ぐ

健康な歯に小さな虫歯ができたとします。虫歯の進行を止めるためには汚染部分を削り、レジン(歯科用プラスチック)を埋めなければなりません。虫歯にかかるのには原因がありますが、その原因を取り除かずに、口腔ケアも熱心に行わないと、やがて虫歯が再発するのは必然です。

そしてまた汚染部分を削り、詰め物(インレー)を装着します。それでも口腔ケアを怠ると、さらに虫歯が再発し、健康な歯質がさらに小さくなります。再治療を行ってもさらに再発し、歯の神経を除去して被せ物(クラウン)で補わなければならなくなるのです。さらに悪化すれば、抜歯を余儀なくされるのです。

予防歯科の考え方に基づいた定期的なクリーニングと検診は、この悪循環を断ち切るための最も効果的な方法なのです。

自宅でのケアと歯科クリーニングの関係

歯科医院での定期的なクリーニングと並行して、日々の自宅でのケアも欠かせません。

自宅でのケアの基本は、毎日の丁寧な歯磨きです。歯ブラシだけでなく、歯間ブラシやフロスを使用して、歯と歯の間の汚れもしっかり除去することが大切です。また、フッ素入りの歯磨き粉を使用することで、歯の再石灰化を促し、虫歯予防効果を高めることができます。

しかし、どんなに丁寧に歯磨きをしても、歯の表面の約30%は歯ブラシが届きにくいと言われています。また、一度歯石になってしまった汚れは、自宅でのケアでは除去できません。

ここに、歯科医院でのプロフェッショナルなクリーニングの重要性があります。歯科医院では、専門的な器具を使用して、自宅でのケアでは取り除けない汚れや歯石を除去します。また、歯科医師や歯科衛生士による専門的な視点からのチェックにより、自分では気づきにくい問題を早期に発見することができます。

自宅でのケアと歯科クリーニングは、車の両輪のようなものです。どちらか一方だけでは十分な効果が得られません。両方を適切に行うことで、お口の健康を最大限に保つことができるのです。

予防歯科の考え方に基づいた健康な口腔環境の維持は、生涯にわたって自分の歯で食事を楽しむための基盤となります。

歯科クリーニングの理想的な頻度は人それぞれですが、定期的に歯科医院を訪れ、自分に最適な頻度でクリーニングを受けることが、お口の健康を守るための第一歩です。

船橋あらき歯科矯正歯科では、患者様一人ひとりのお口の状態に合わせた予防プログラムをご提案しています。定期的なクリーニングで、健康で美しい歯を維持しましょう。詳しくは船橋あらき歯科矯正歯科までお気軽にご相談ください。

監修医師

医療法人社団高志会 船橋あらき歯科・矯正歯科 院長 新木 志門

経歴

・日本歯科大学 生命歯学部 卒業

・東京医科歯科大学 第二総合診療科

・都内歯科医院 勤務

・医療法人輝翔会 西大津歯科医院 勤務

所属学会

・日本口腔インプラント学会 会員

・顎咬合学会 会員

・歯髄細胞バンク 認定医

船橋の歯医者|船橋あらき歯科

日付:   カテゴリ:歯科ブログ

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